とことん白藍塾

第30話:入試問題から読みとれるもの ―看護専門学校の問題より―

 

医療系小論文問題に込められたメッセージ

 医学・看護・医療系の大学・専門学校では、入試科目に小論文が含まれる場合がほとんどです。tokoton-30a.jpgなぜこれらの学校では小論文試験を行なうのでしょうか。大きな理由として、適性をみることが挙げられます。医師や看護師としての適性があるかどうかを受験生の書いた小論文から判断するのです。

逆に考えると、小論文の入試問題から、その学校が受験生のどんな資質を見ようとしているのかがわかります。白藍塾の入試向けの講座では、受講後半は志望校対策になりますが、講師は、個々の受講生の志望校過去問題を見ながら、各学校が何を求めているのかを見極めます。

今回は、近年とても人気の高い公立の看護専門学校の問題をいくつか例に挙げて、小論文問題から学校のどんなメッセージを読み取れるかを説明しましょう。

 

優しさと思いやりだけでは物足りない

平成23年度の東京都立看護専門学校の推薦入試小論文問題は次のような問題でした。

課題文で、がん治療の専門医である筆者は30~40年ほど前のがん治療を回想しています。死の直前でも「絶対良くなる」と激励することが「最大の愛と思いやり」と信じていた頃の医療の在り方のほうが医師も患者の家族も満足していたと伝えています。

設問は、筆者の主張をまとめたうえで「がん告知」に対する自分の考えを800字程度で書くものです。

解答としてまずいのは「本当の優しさ」「本当の思いやり」を熱弁して、感情論に終始してしまうパターンです。もちろん、人への優しさ、思いやりは、看護師を目指す人ならば当然備えていなくてはなりません。しかし感情をアピールするだけでは看護師としての適性を十分伝えたことにはなりません。

 

相手の立場を尊重する姿勢と冷静さをアピール

tokoton-30d.jpgこの問題の場合、がん告知に賛成、反対の両方の意見に十分な理解を示したうえで、自分はどちらの立場に立つかを示すとよいでしょう。そうすることで、他人の意見に耳を傾ける姿勢や冷静な判断を下せることをアピールできます。そのことから、患者本位の看護やチーム医療に貢献できる人物と受け止めてもらえます。

優しさや思いやりはもちろん大切ですが、それを表面的な理解で示してはいけません。協調性、多様な価値観への理解、沈着冷静さ、論理的思考力といった資質に裏打ちされてこそ、今医療現場で求められている優しさと思いやりをアピールできるのです。

 

社会人に求められるねばり強さ

今度は、平成23年度東京都立看護専門学校の社会人入試問題を見てみましょう。

課題文は茂木健一郎氏の著書『ひらめきの導火線』からの抜粋で、「なにか行動を起こし、最後までやりきることで、脳は快楽を得て、さらに大きな喜びを得ようとしてがんばる、このようにして脳は強化される」といった内容です。tokoton-30c.jpg

設問は、筆者の考え方を簡潔に要約した上で、受験者自身が「強化学習が成立した経験」について1,200字程度で述べるものです。

求められている解答は小論文というよりも自己PR文に近いものです。出題意図は「あきらめずに最後までやりきるねばり強さを持っているかどうか」を問うことです。「何かをやりきった経験を一つもアピールできない社会人は要らない」と明確に線引きしている問題とも言えます。

何をやるにしても長続きしない人がいます。そういう人が看護の道を目指しても途中リタイアしてしまうのは目に見えています。社会人の方が看護師になるために勉強し続け、また看護師として働き続けるのは、高校生よりも、背負っているものが多い分、苦労も多いようです。つまり途中リタイアする言い訳材料も多くあるというわけです。看護の門を叩く人には熱しやすく冷めやすい性格の人が結構多いことを、学校側は過去の受験生、在学生を見て知っているのです。

途中リタイアされては、学校にとって、さらには社会にとって大きな痛手です。そのため、ねばり強さをストレートに尋ねる問題も出題されるのです。

 

社会人に求められるコミュニケーション力

続いて川口市立看護専門学校の平成21年度の社会人入試問題を紹介します。

「先輩の背中が人材を育てる」というテーマで、800字以内で考えを述べる問題でした。課題文はありません。

先輩の背中を見つめる立場と自分が背中を見られる立場の両方から書けますが、「年齢やキャリアを盾にコミュニケーションをうまく図れない人では困る」という学校のメッセージが読み取れます。その点を念頭に置きながら、文章の組み立てを考えるといいでしょう。

tokoton-30b.jpg社会人入試で看護専門学校を目指す人には、様々な年齢、学歴、職歴の持ち主がいます。どんな背景を備えていようとも学校に入学すれば高校を卒業したばかり人と同じ一年生です。特別扱いはしてくれません。年の離れた同級生と上手に付き合っていかなくてはなりません。年齢が離れていることで冷ややかな目で見られても気にせずに輪の中に入っていくタフネスさも必要です。

卒業後は自分より若い看護師や医師、医療スタッフの下で働くこともあります。そんなときに、謙虚な姿勢で先輩に接する姿勢、チーム医療の一員として協調性を発揮することが求められます。社会人の方が看護師を目指す場合、年齢やキャリアを盾にコミュニケーションをうまく図れないようでは適性なしと思われても仕方がありません。医療系の小論文試験では、こういった点も推し量られているのです。

医療系入試を受けるための前提条件

以上のとおり、医療系の小論文では「適性」を審査されます。ただ、言うまでもなく、適性のみを審査しているわけではありません。論述力、読解力、語彙力、知識量などの学力面も当然みています。

学校の求める適性を知ることは医療系入試を受けるための前提条件です。適性を掴んだら、それを常に頭の片隅に置いて、普段の学習に取り組んでください。そうすれば、適性をうまくアピールできるでしょうし、うっかり適性を欠いた文章を書いてしまうミスも防げるでしょう。

 

(2011.8.6)

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