白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第18話・小論文が書けると大学で得をする

 

小論文受験のすすめ


6月下旬から7月中旬にかけて、多くの高校では三者面談が行われます。ここで、志望校をどこにするか、推薦入試を受けるか受けないかが、ほぼ決まるようです。本人の希望、学校の成績、模試の偏差値などに加え、受験科目が何であるかが、判断材料になります。tokoton-18a.jpg


「この大学は小論文があるからやめておけ」「一から小論文を勉強するぐらいだったら、推薦入試に色気を出さずに、一般受験をしたほうがいい」というように、本人が行きたい大学でも、入試に小論文があると、否定的な意見を言う先生もいるようです。


小論文が検査内容に入っているからといって、行きたい大学をあきらめるのはもったいない話です。小論文はコツさえつかめば誰でも一定レベルの力をつけることができます。それだけではありません。入学前に小論文を勉強しておくと、大学に入ってから得することがたくさんあるのです。


前回は小論文がいかに他科目の成績向上につながるかをお話しましたが、今回は、小論文を書く力が、いかに大学生活にメリットをもたらすかをお話したいと思います。


 


大学の勉強が楽しくなる・その1


大学は中学や高校と異なり、専門のテーマについて深く掘り下げて学ぶ場と言えます。深く掘り下げて学ぶには、自分の考えを深めるテクニックを知らなくてはなりません。これは小論文を勉強することで身につけられます。


音楽にしてもスポーツにしても、テクニックがあれば、楽しむことができます。たとえばダンスを踊るときも、テクニックのないうちは、人目ばかりが気になり、楽しめないものですが、ステップを1つ覚えることで、音楽も自然に体に入ってきてダンス自体を楽しめるようになります。それと同じように、考えを深めるテクニックを持っていれば、大学の勉強を楽しめるでしょう。


 


大学の勉強が楽しくなる・その2


小論文は、ある問題に対し、イエスかノーかのどちらかの立場に立って意見をまとめるものですが、当塾では、すぐにどちらの立場に立つかを決めずに、両方の立場の賛成の理由を書き出してから、一番鋭いと思われる理由に着目して論をまとめなさいと教えます。 


イエス・ノーの両方に賛成の理由を考えてみると、これまで思いつかなかった、新鮮な考えを発見することがあります。面白い切り口を発見できるテクニックは大学の勉強でも役立ちます。卒業論文を書くにしても、ゼミで話し合いをするにしても、時間をかけて考えた割には、ありきたりな考えしか思いつかない学生は山ほどいます。しかし、小論文を勉強していると、1つのテーマに対し、多様な見方ができるので、他の人が思いつかないような、鋭い、ユニークな切り口を発見できる可能性もグンと高まります。それをアピールできれば、教室でも鼻高々でしょう。


 


進級、卒業が楽になる


続いて、現金なメリットも紹介しておきましょう。


小論文の書き方を身につけておけば、大学での単位取得が楽になります。大学ではたくさんの科目の試験やレポートで合格点を取らなくては進級できません。もちろん卒業もできません。試験やレポートは論述形式で解答するものがほとんどです。入試を通じて小論文の書き方を身につけておけば、大学に入って苦労せずに合格点を取ることができます。そうなれば、勉強以外の時間もたっぷりとることができるので、大学生活を楽しみながら、楽に進級、卒業もできるというわけです。


 


就活に役立つ


 もうひとつ、これから大学を目指す受験生にどうしても知っておいてほしい、小論文を勉強するメリットをお話します。


3年後、今受験生である多くの方が直面する就職活動のことです。小論文の基礎を身につけている人は、そうでない人に比べて、就活で大きなアドバンテージを持っていると言えるでしょう。


 リーマン・ショック以降、大学生の就職難が続いています。学生は大学3年の秋から本格的に就活に入り、何十社、人によっては百社を超える企業にエントリーシートを送るそうです。エントリーシートの出来が悪いと、一次面接にすら進めないのです。


エントリーシートには、志望動機、自己PRなど様々な質問項目がありますが、多くの質問に対し、200~600字程度の文章にまとめなくてはなりません。小論文の基本を理解している人は、わかりやすく、筋道のしっかりした文章を難なくまとめられます。また、考えを深めるテクニック、面白い切り口を見つけるテクニックをもっているので、他の応募者よりも、質の高いエントリーシートを仕上げられる可能性はグンと高くなるでしょう。


 質の高いエントリーシートは、質の高い面接のシナリオとも言えます。もちろん、企業研究、模擬面接など、周到な準備は必要ですが、準備さえすれば、よいシナリオを持っている学生のほうが有利なのは言うまでもありません。


 


小論文受験は将来への投資


最近は安全志向の高校生が増えていると聞いています。学校の先生や親御さんにも、それを進める傾向があるようです。その安全志向の延長線上にあるのだと思うのですが、未知の学習をやりたくない、やらせたくないと、小論文試験を避ける人もいるようです。なんと後ろ向きな選択でしょう。大学入試で人生が止まるわけではないのです。これからの厳しい時代、その先まで考えて、受験勉強もうまく活用すべきです。


これまで見てきたように、小論文の学習で得られるものは、大学合格だけでなく、大学で学ぶ力であり、就活に勝つ力なのです。ぜひ自分の将来のためにも、果敢に小論文入試に挑んでほしいと思います。

tokoton-18b_book2.jpg


 


(2010.7.4)


カテゴリー

アーカイブ

カテゴリー