白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第27話:『作文力をつける』のこと


本で伝える白藍塾の作文

 この3月、待ちに待った『作文力をつける』の改訂新版が学研教育出版より発売になりました。小学低学年用、小学中学年用、小学高学年用の3冊シリーズです。tokoton-27a.jpg

 98年、小学高学年用の作文参考書として世に出た『作文力をつける』は、01年に3冊シリーズに進化して、小学生用の作文参考書としては異例のヒット作となりました。

10年ぶりに新しくなった『作文力をつける』ですが、学研教育出版編集部、イラストレーター、デザイナーなど、多くのスタッフが様々な工夫を凝らしてくれたおかげで、これまで以上に楽しく、読みやすい参考書に仕上がりました。低・中学年用では、第1部のマンガ仕立てのストーリーが必見です。塾長書き下ろしのたいへんおもしろいお話が加わりました。マンガはフルカラーです。高学年用には、筑波大学附属駒場中学の国語記述問題の解法を作文の応用として紹介しているのが見ものです。

今回は小学生参考書『作文力をつける』の魅力を語りたいと思います。この本の魅力を語ることは白藍塾の実践する作文教育の特色を語ることに通じます。

 

おもしろく書く

「学校で書く作文はつまらないよ」

4月に3年生に進級した娘が、数か月前、このようにぼやいていました。本が好きで、1年生の頃から作文を書くのは好きな子だったので意外に思い、その理由を尋ねると「書くことが決められているから」とのことでした。

実際に学校でどんな指導がなされたのかはわかりませんが、確かに授業参観で目にした教室に掲示されている作文はどれも似たり寄ったりの内容でしたので、子どもの言っていることもまんざらでたらめでもないように思います。道徳指導と生活記録という枠に作文教育を押しこめてしまっているのでしょうか。それとも、家で荒唐無稽な創造作文ばかり書かせているため、単に学校の作文が物足りないだけなのでしょうか。つまり、私が悪いのでしょうか?

『作文力をつける』では、「よい子の作文をめざしてはいけない」と説いています。作文を書くときの一番大切な心がまえは「おもしろく書くこと」と教えています。おもしろく書くためには、いじめっ子やひねくれ者の気持ちを書くこと、ウソをつくことも許容します。

 私の娘と同様に、学校で書かされる作文に窮屈さを感じている子どもたちは、「おもしろく書こう」と教えられることで、活き活きとした作文を書けるようになるでしょう。

 

テクニックを身に付ける

「学校では全く作文の書き方を教えてくれない」

10年前も今も、保護者の方々からこのような声が多く寄せられます。

多くの先生は文章を書くことの大切さは理解なさっているのかもしれませんが、具体的な書き方は教えないようです。そのため、多くの子どもの作文は、出来事の羅列に終始して、最後に「友だちと仲良くしていこうと思います」「来年ももっとがんばりたいと思います」と、道徳や努力目標で締めくくる、退屈なパターンにしかならないのです。

「何を書くか」を指導する以前に「どう書くか」を指導しなければ、子どもたちが文章で表現する楽しさを味わえないのは当然かもしれません。

『作文力をつける』では、低・中・高学年と、発達段階に応じて、いくつもの文章テクニックを教えています。一文を長くしない、くわしく書く、といった基礎的な注意点から、二部構成、そして樋口式作文の代名詞とも言える「ホップ・ステップ・ジャンプ・着地」の四部構成法までを低学年から教えます。

高学年用では、より詳しく文章テクニックを伝授します。書きだしの工夫、ドラマをまねる、などのテクニックを紹介し、さらには読書感想文、小論文、入試記述問題の書き方までを教えています。

テクニックを教えることで、多くの子どもたちの作文に対する苦手意識が解消されるでしょう。

 

物語の謎解きをしながら作文を書く

「ゲームを楽しむような感覚で作文の勉強に参加させる方法はないだろうか」

そのように思い、塾長の考えたアイデアが、物語を活用することです。

『作文力をつける』(低・中学年用)の第1部はマンガ仕立てのストーリーになっています。物語の先がどうなるのか楽しみにしながら読み進めるうちに作文の問題が出てきます。しかもその「問題」は従来の国語の問題のようなものではありません。クイズのような楽しめる問題です。

お子さんはその問題を考えることで、物語の中に参加していきます。「このとき、あなただったらどうしますか」「登場人物○○くんの意見にあなたは賛成ですか、反対ですか。その理由を書きなさい」というような問いに答えながら物語を読み進めていくのです。

国語の問題のように、必ずしも正解があるわけではありません。かといって、何でも自由に答えてよいというわけでもありません。登場人物の行動や台詞などの”証拠”をもとに答えを考えるのです。そうやって、推理力を養いながら、短い文章、長い文章を自分なりに考えていくのです。

答えを導くためにあれこれ想像する力、物事の前後関係を考える力は、文章構成力、論理的思考力を養ううえでとても役に立ちます。さらに、探偵気分を味わいながら、楽しく取り組めるので、学習意欲を高めるうえでも非常に有効です。

改訂新版の低学年用は、なかよし三人組が犬のハナコの子どもを探すお話です。ハナコは普通の犬とちょっと違います。中学年用はなかよし三人組が理科室に忍び込みガイコツに声をかけられる、ちょっと怖い話です。

どちらもワクワクするお話なので、多くの小学生に楽しんでももらえるでしょう。

 

『作文力をつける』は作文教育の提案書

今にして思えば、『作文力をつける』は学校、家庭に対する、新しい作文教育の提案書であったと思います。そして、白藍塾小学生作文教室は、その提案を実践する場としてスタートしたのです。当塾小学生会員の作文を読み、また彼らの成長の跡を見ると、塾長、そして白藍塾が『作文力をつける』で提案した作文教育の在り方は正しかったと思います。

改訂新版には、別冊「答えとアドバイス」が付いています。解答例だけでなく、「おうちの方へ」という保護者向けのアドバイスもついています。ここには、問題のねらいと、よりよい解答のためのヒントとアドバイスが書いてあります。これを参考にすれば、親子で充実した作文学習ができるでしょう。

家庭学習を終えて、さらに力を伸ばしたい、もっと作文を好きになりたいお子さんは、ぜひ白藍塾の門を叩いてください! 職人講師が腕によりをかけて添削します。


 

(2011.4.24)


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