白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第11話:力を伸ばすには


担任制にこだわる


白藍塾では、全ての講座において、担任制で添削指導を行います。受講の一回目から最終回まで同じ講師が赤ペンを入れ続けるのです。


巷にはいろいろな通信教育塾がありますが、担任制を取り入れている塾は少数派です。多くの塾が担任制を導入しないのは管理しにくいことが主たる理由のようです。確かに機械的に講師に割り振っていくだけならば管理は楽です。担任制にすると、管理上の様々な手間が増えます。何万人もの受講生を抱えている大手では、ひと手間増えるだけでも膨大な労力が派生してしまいますので、できれば担任制を導入したくないというのも十分に理解できます。しかし私たちは、受講者の作文・小論文の力を伸ばすうえで担任制は欠かせないシステムだと考えています。今回は当塾がこだわる指導システム、担任制についてお話しましょう。


 


添削はテストではない


まずは、担任制とは逆の、毎回講師が変わる指導体制はどういうものかを考えてみましょう。利点は多様な視点で指導できることでしょう。前回担当の講師が見落とした優れた点、改善点を次の担当者が見つけるかもしれません。しかし担当者はまた変わってしまうので、前回指摘された良い点を伸ばせたか、悪い点を改善できたかを次の回で確かめることはできません。つまり指導に連続性がないのです。


講師が毎度変わる通信教育は、そのときの答案の出来を判断するテスト採点に近いかもしれません。白藍塾では添削指導をテスト採点とは捉えていません。紙の上の授業だと考えています。


 


力を伸ばす指導


毎回同じ講師が赤ペンを入れることで、前回に比べてどこがどう良くなっているか、いつもはまってしまう落とし穴はどこなのか、というように、学習歴を踏まえたうえでの指導が可能になります。


tokoton-11a.jpg小論文講座の初期段階では、基本の型(四部構成)を十分に理解していない答案が大半を占めます。よくある失敗例が、第二部「意見提示」で主張した意見と第三部「展開」で示した根拠がかみ合っていないパターンです。もちろん講師は初回にこの点を指導します。ところが次にも同じ失敗をする受講生が結構います。同じ失敗を繰り返した原因として、「前回添削を理解していない」「理解したが知識不足のために根拠を示せない」「調べた知識をたくさん並べるのがよい、といった誤った先入観を拭い去れないでいる」「受講生のコンディションが良くない」などのケースが考えられます。講師は、連続して受講生の答案を見ることで、何が原因で、どう伝えるのが受講生にとって効果的かを判断しやすくなります。


 指導が功を奏して、次の答案で改善が見られれば、基本の型を理解できたと把握できます。そうなれば次の段階で、展開部をいかに深めるか、といった高いレベルに指導の力点を移すことができます。担任制であれば、このように成長を見守りながら教育レベルをあげていく指導展開ができるのです。


 


学習モチベーションも維持しやすい


「算数の図形問題は好きですか(僕は好き)」


白藍塾の解答用紙には、全て質問欄が付いています。質問欄ではそのとき取り組んだ課題以外の質問も受付けています。普段文章を書いていて疑問に思うことなどを尋ねることが多いようです。


最初に紹介したのは小学3年生の男の子が解答用紙に書いた質問ですが、小学生の場合、このように担任講師の人となりを尋ねるような質問も結構あります。


「はい、好きです。たしか中学生になってからだったかと思いますが、図形の証明問題というのがあって、それが特に好きでした。H君はどういう図形問題が好きなのかな?ふつうの計算より好きなのかな?私はたくさんならんだ計算問題を次から次へと解いていくのもけっこう好きだったなぁ」tokoton-11bs.jpg


指導キャリアは3年ほどですが小学生作文指導でメキメキと頭角を現し、今やトップレベルの実力講師である菅野みゆきの返答です。はぐらかすのでもなく、それでいて媚を売るのでもなく、素直に質問に答えています。


この児童は管野に毎回人となりに関する質問をしています。講師の人柄を1つ知るために、彼は毎月欠かさず答案を提出しているのかもしれません。「今度どんな質問をしてみようかな」「答案が戻ってくるのが楽しみだな」と、講師に対する興味が答案提出のモチベーションにつながっているのならば、それは望ましいことです。担任制ならではの通信教育の活用の仕方と言えるかもしれません。


 


チーム力で支える


「力を伸ばす指導を実現し、学習モチベーションを維持する」。担任制は、そのために有効な指導体制です。


 しかし、担任制を有効に機能させるには、そのしくみを塾全体でバックアップしなくてはなりません。答案の管理さえすれば、あとは講師にお任せというわけにはいきません。


 担任決めは塾側で行いますが、何はともあれ一人一人の受講生に満足いただけるように担任講師を決めなくてはなりません。そのためには、各講師の特性をしっかり把握しておく必要があります。また、講師が不調を理由に不本意な指導を晒さないように、常に目を行き届かせていなくてはなりません。必要に応じて研修や個別アドバイスを行い、力の維持、力の向上が実現できるように、支えていかなくてはなりません。


幸い、担任講師に対する不満の声は年を追うごとに少なくなっています。それは適材適所に講師を割り当て、なおかつ、講師一人ひとりの指導力の維持・向上に努めている結果と自負しています。


講師をサポートしていくチーム力があってこそ、担任制の良さを活かし、受講生の力を伸ばすことができるのです。


 


(2009.11.29)


 


 


 


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