第22話:きめ細かい添削
「きめ細かい」の意味
白藍塾は設立当初から「きめ細かい添削」というキャッチフレーズを使用してきました。最近は、大手を含めていろいろな添削業者がこのフレーズを使っています。そういった業者の添削見本を見ると、確かにたくさんの書きこみがあり、見た目はすごいなーと思わせるものがあります。しかし、細かくコメントを読んでみると、はたしてこれをきめ細かい添削というのだろうかと、首をかしげたくなるときもあります。
そもそも、「きめ細かい」とはどういう意味でしょう。広辞苑を引いてみると、「木目が細かい」で、「こまかな点にまで配慮が行き届いている」とあります。となると、「どんな細かい点」に、「どのような配慮をしているのか」で、指導者の意図するきめ細かさがわかると思います。
今回は、白藍塾の考える「きめ細かい添削」についてお話をすることにします。
それにしても、「木目」という漢字の感じ、いいですよねえ・・・。
真っ赤な添削
きめ細かい添削というと、あっちにもこっちにも、いたるところに書きこみをして、答案全体を真っ赤にしているイメージがあります。確かに真っ赤な添削は、見た目ですごいなーと思わせる迫力があります。
実際、たくさんの書き込みで指導者の熱意を伝えることも重要です。白藍塾講師の添削も、毎回余白がなくなるぐらいにコメントを書き込むケースが結構あります。ただ、当塾の考えるきめ細かい添削は、必ずしもたくさんのコメントを書くことではありません。あれこれ書いている割には、結局全体で何を言いたいのかがわからない添削というのを時々見かけます。大手でよく行われている、マニュアルを見ながらちょこちょこ文字を埋めていく添削はこうなりがちです。
添削は書き直しのためのヒントです。受講生がメッセージを受け取りにくい添削では、いくらたくさん書き込もうとも、配慮の行き届いた添削とは言えないのです。
表記面に細かい添削
一番いけないのは、原稿用紙の使い方、文体の整合性、言い回し、誤字脱字、漢字のトメ・ハネのチェック、篇と旁のバランスなど、表記面ばかりを細かく言い、肝心の作文の中身にはほとんど触れない添削です。
表記面の指導も学習全般を考えれば決して軽んじてはいけませんが、そればかりに終始していては文章指導とは言えません。
やはり内容に踏み込んで赤ペンを入れなくては文章力を伸ばすことはできないのです。文章力向上を目的とした添削指導において、力を伸ばすのに役立たない指摘をいくらたくさん書き込んでも、それは配慮の行き届いた添削とは言えないでしょう。
あえて書かない
ほとんどの受講生は、1回の添削で全ての問題点を克服するのは難しく、何度か添削を受けるうちに、徐々に改善が見られ、力をつけていくものです。
白藍塾の講師は、毎回、受講生の答案を眺めながら「その答案の最も大きな問題点」を頭に思い浮かべます。その問題点に対し、どのような指導をして改善に向かわせるかを考えます。
大きな問題点の指導を優先的に考えて、他に問題点があっても、その日の添削ではあえて触れないこともあります。たとえば、大きな問題点とは別に、文章のぎこちなさという問題点があったとしましょう。その場合に、ぎこちなさにはあえて触れないでおくのです。そこに触れると、受講生の気もちがそちらにばかり向いてしまい、大きな問題点を改善できないままになってしまう恐れがあるからです。
1つ1つの答案に対し、添削で伝えるメインテーマがあります。それをわかりやすく、効果的に伝えることが、添削に必要な配慮だと私たちは考えます。
担任制だからできるワザ
白藍塾の添削指導は担任制で行います。担任制にすることで、一人の受講生を継続してみることができます。そうすることで「前回指導した点を克服できているか」「この欠点はたまたま今回だけのものなのか、それとも受講生の持つ悪いクセなのか」と、目の前の答案だけでなく、前回答案の内容を頭に置きながら添削できます。前回の問題点を克服できていなければ、別のアプローチで再度指導します。表れている欠点がそのときだけのものであれば、「受講生の苦手なテーマだった」「精神的に不安定な時期にある」などの原因が考えられますので、それぞれのケースに応じた指導をします。
きめ細かさを支えるもの
添削とは、受講生の書いた中身に対し、どう改善するとよいか、その書き直しのヒントを授けるもの、と当塾では考えています。そのヒントが有効に機能するように、「何を書き、何を書かないか」「前回との答案と合わせてみた場合に、何が言えるか」といった点をペン入れ前に考えます。ペン入れ前のこの気配りこそが、当塾の「きめ細かい添削」を支えています。
目に見えないところにまで気を配り、ていねいに仕上げる当塾講師の添削は、まさに職人仕事と言ってよいでしょう。
蛇足ながら…
冒頭で「木目が細かい」の「木目」の漢字の感じがいい、と言ったのは、「木目」という文字から、モノ作りにこだわる職人の指先を木目とともに連想したためです。「木目が細かい」とは、まさに職人仕事を形容するのにふさわしい言葉のような気がします。
(2010.11.6)
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