第23話:小論文を中学生におススメしたい
白藍塾の中学生指導
白藍塾はあまり中学生を指導していないのかな?
これまで本連載で中学生指導に焦点を当てて紹介することはありませんでしたので、そのようにお感じになった方も結構多いのではないでしょうか。
実は、白藍塾が最も多く指導しているのは中学生なのです。
中学生指導というと、高校入試対策を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、そちらはむしろ少数派です。入試目的ではなく、もっと先の将来を見据えて、小論文を学ぶ中学生を今最も多く指導しているのです。
白藍塾中学生小論文ゼミで学ぶ人たち
「中学生になってもぜひ白藍塾の添削を受けさせたい」
小学生講座を卒業した会員のこういった声に後押しされて、中学生講座は2002年に開講しました。そのため、中学生の会員は、開講から現在に至るまで、小学生講座からの継続会員が多数を占めています。受験を理由に4、5年生で休会していた会員が、中学入学を機に、白藍塾に戻ってくるケースも結構あります。
彼らは必ずしも高校入試を目的に申し込んでいるわけではありません。その証拠に、彼らの中には、国公私立の中高一貫校に通う中学生も多くいます。高校入試よりさらに先、大学入試、大学での学び、さらにもっと先の社会に出てから役立つ能力と判断して、中学生から小論文を学んでいるのです。論理的思考力、書いて伝える力、多様な価値観など、小論文の学習で得られる素養が、いかにこれからの社会に必要かをわかっているのでしょう。
新規入会者にも中高一貫校に通う生徒がかなりいます。彼らも小学生からの継続会員同様に、中学生から小論文を学ぶ意義をわかっているのだと思います。
もちろん高校入試対策を見据えて入会される方もいます。しかし彼らとて、高校入試対策だけを目的に入会するのではなく、学習全般の基盤になるようにと考え、中1あるいは中2から小論文を学ぶ人が大半のようです。
私立中学の先進的な取り組み
現在白藍塾は、通信教育事業に加え、学校文章教育サポート事業にも力を入れています。小学校から大学まで、様々な取り組みを行っていますが、一番多く手掛けているのは私立中学校での小論文教育サポートです。立命館宇治、京都産業大学附属、平安女学院(立命館コース)、立命館慶祥、岩田の私立5校が採用して下さっています。
当塾のオリジナルテキストに沿って先生方が小論文の授業を行い、生徒は年に10本近い小論文を書きます。そのうちの何本かを当塾が添削します。冒頭の「白藍塾が最も多く指導しているのは中学生」の理由は、提携校中1~中3までの添削指導を請け負っているからです。
中学校に小論文の授業を取り入れるとの発想が、いかにも私立らしい先進的な取り組みです。当然、先を見据えての教育ですが、大学入試だけを考えているわけではありません。大学での学び、さらには大学卒業後の社会で生きていく力を伸ばそうとしているのです。提携校に大学の附属校が多いところから、この点はご理解いただけると思います。
先を見据えた教育の重要性
私たちは、入試目的にとらわれずに、小論文を学ぶ意義をもっとたくさんの中学生に知ってもらいたいと思います。
少子化の影響、ゆとり教育による学力格差の影響で大学入試全般は易化しています。そのため、出身大学が必ずしも社会的に優位に立つ条件にはならなくなっています。就職にしても、昇進にしても、ビジネスチャンスを得るにしても、厳しく選ばれる時代になりました。グローバル化の進展に伴い、その傾向はますます高まるでしょう。その際に、論理的思考力、書いて伝える力、多様な価値観を理解する能力など、小論文で培われる素養が役立つのです。
子どもに小論文を学ばせたいと思う親御さんの多くは、そのことを身をもってお感じになっているのだと思います。
中学生は型の飲み込みが早い
より順応性の高い年齢のうちに小論文の基礎を身につけてほしいというのも、中学生に小論文を勧める理由です。
たくさんの中学生を見てきて言えることですが、彼らは基本の型である四部構成の飲み込みが非常に早いと思います。高校生や社会人に比べて、文章を書くことに対し、妙なこだわりがなく、素直に受け止められるためでしょう。
そうかと言って、もちろん全員が全員すぐにすばらしい小論文を書けるようになるわけではありません。学習の初期段階では、多くの生徒が様々な問題点を抱えた小論文を書きます。ただ、問題点を克服する過程において、彼らは大きく成長します。実際に書く練習を通して小論文を学べば、高校生になるまでには型をすっかり自分のものにして、どんな課題においても使いこなせるようになるでしょう。
怒りの捌け口としての小論文
実はもう一つ、ぜひ中学生に小論文学習を勧めたい理由があります。多くの中学生は第2反抗期を迎えるからです。
13歳前後になると、あらゆる権威、社会のルールに疑り、軽蔑します。そして、異常に高まった反抗心を、権威者である親や教師にぶつけます。親としては、子どもが自分で自分のことを解決できるまで見守るのがよいようですが、反抗心の捌け口として、小論文の勉強を勧めるのも良い手だと思います。
「常識的考えを否定してひねくれた意見を言う」「道徳的なきれいごとを切り捨て、論破してみる」。こういった反抗心も、論理構成のしっかりした文章で説得力のある意見にまとめられれば、高い評価を得られます。フラストレーションの解消になり、また、小論文の力の向上にもつながるので一挙両得と言えそうです。
ただし、うまく勧めなくてはいけません。頭ごなしに「小論文を勉強しろ」と言ってはかえって逆効果です。子どもにとって権威者である親に勧められた勉強など、最も受け入れたくない存在のはずです。挑発する、おだてる、子ども自身が自発的にやりたいと言い出すような仕掛けをするなど、子どもの個性と働きかけるタイミングを推し量りながら、うまく勧めるようにしてください。
(2010.11.30)
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