白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第24話:直前期に、さらに力を伸ばすには!

 

直前期に、添削以外の方法で力を伸ばすには


入試が近づいてまいりました。年末年始になると受験生は「このままで大丈夫だろうか」「もう少し力を伸ばせないかな」と、なんとも落ちつかない気分になるものです。tokoton-24a.jpgもちろんおろおろしているだけでは力は伸びませんので少しでも学習を進めることが大事です。小論文の場合、一番効果的な学習は言うまでもなく添削指導を受けることです。ただ、直前期になると他科目の学習も大詰めで、なかなか他人に答案を見てもらう余裕がない人も多いかと思います。


今回は、添削以外の方法でもう一歩合格に近付く学習法を紹介します。慶応や国立難関大学などの場合に、受験生の実力が拮抗してボーダーライン上にたくさんの人が集まります。ということは、あと一歩の努力が合否結果に大きく影響を与えるのです。他科目の学習の合間を使ってでも、ここで勧める「直前学習」をぜひ取り組んでみてください。


 


模試の復習


 多くの受験生はこれまでにいくつかの公開模試を受けてきたと思います。正直言って、模試の採点者が赤ペンで書いた講評はあまり参考になりません。多くの場合、アルバイトの採点者がマニュアルに基づいて、大量に、機械的にさばいているので、復習に値するほどのコメントはほとんどないでしょう。


 あらためて見直したいのは返却答案といっしょに送られてきた解説や模範解答です。課題文の背景にある知識や筆者の主張の解説、合格レベルの解答はどういうものかを示してくれています。


直前期に、それらを読み直すだけでも力になります。出題内容は、大手予備校が、様々なデータを駆使して、今年の受験に役立ちそうな問題を出題しています。手元にある、そんな貴重なネタをしっかりモノにしましょう。


 


赤本の活用


 赤本も、解説・模範解答を読み込むと小論文に有効な知識にできるでしょう。多くの受験生は、赤本で過去数年分の入試問題を本番練習用に取り組むとしても、解説・模範解答はあまりじっくりと読まないようです。問題とあわせて解説・解答を数年分通して読むことで、志望大学・学部が好む知識の傾向が見えてきます。それがつかめれば、本番での課題文の読み取りにもきっと役立つでしょう。傾向がつかめなくても、そこに書かれている知識を吸収するだけで数冊分の読書と同じくらいの価値はあります。


 


模範解答の取り扱い


 ただ、模試も赤本も模範解答の扱い方には注意が必要です。模試も赤本も、模範解答はレベルの高すぎるものが多くあります。ときには大学院生の研究論文のような、高度で専門的な内容のものもあります。受験生はこれを目指してはいけません。模範解答レベルの文章を目指すと、下手に背伸びをして、わけのわからない小論文を書くことにもなりかねません。


 最も賢い使い方は、構成を考える練習に使うことです。模試や赤本の模範解答は白藍塾や樋口本で指導している四部構成に従っては書かれていません。そこで、模範解答をにらみながら「四部構成にあらためるとどうなるだろう」と考えてみてください。要するに、文章の並べ替え問題と捉えるのです。そうすることで、四部構成の理解が高まります。また、そうやって考えながら読むことで、模範解答に書いてある知識が頭に定着しやすくなります。


 


参考書の活用


 解説・模範解答を知識ネタにするという発想からすると、小論文の参考書も有効活用できます。樋口本であれば、模範解答は四部構成に従って書かれているので、並べ替えをしなくても構成の手本にすることができます。文章内容もできるかぎり受験生が手の届くレベルでまとめています。つまり、模試や赤本の欠点をカバーして作られているのが塾長の小論文参考書なのです。だからこそ長きにわたり、多くの受験生に愛読されているのです。


 この秋に上梓した『小論文これだけ!』シリーズ(法・政治・経済編、人文・情報・教育編、医療・看護編の3冊。※他に超基礎編を有・本連載19参照)は特にお勧めです。グローバル経済、メディア、先端医療など、知識ネタごとに小論文問題を用意し、その解説と模範解答を、イエス・ノー、2つの立場に分けて紹介しています。模範解答が2つあることで、一つのテーマを2つの視点で理解することができます。そうすることで、より知識に厚みが増し、高度な小論文を書く素養が身に付きます。


 もちろん『小論文これだけ!』シリーズに限らず、他の樋口本の解説・模範解答も、この直前期に読むことで、知識を得るため、構成力を磨くために使えること間違いなしです。

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添削の復習


 最後に白藍塾の会員を含め、これまでに添削指導を受けてきた人に一番重要なことを伝えます。


この直前期に、添削答案の復習を必ず行ってください。過去に自分が書いた小論文のどこがまずかったのか、自分の書く小論文の悪いクセは何か、そして、それらの短所を既に克服できているどうかを再確認しましょう。まだ克服できていないようでしたら、そこを重点的に学習しましょう。また逆に、とても評価がよかったとき、ほめられたときの答案を見ながら、何が良い結果をもたらしたのかも押さえておきましょう。そうすることで、良い小論文を書くための自分なりのコツを再認識できるはずです。


 力を伸ばす最良の復習法は、過去に一度書いた小論文を別の視点で書き直してみることです。1つの問題に対し、解答を2つ以上書く練習を積むことで、広い視点で考えられる思考力が養われます。次から次へと新しい問題に向かうよりも、絶対に力になります。他よりも一歩抜きんでるために、1問でもよいので、試みてください。


 


オマケ


入試が近づいてまいりました・・・一年前も同じ書き出しで、12話「本番でのピンチの切り抜け方」をまとめました。こちらも入試直前期の今のうちに心に留めておいてほしいですね。受験生の皆さん、バックナンバーもぜひごらんください。


 


(2010.12.26)


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