白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第1話:極上の添削をお届けするために


 

信念に基づいて指導する


 当塾講師が添削指導をする際に心がけていることがいくつかありますが、そのうちの一つが、「信念に基づいて指導する」ことです。


数学や日本史のテスト問題のように、小論文や作文には正解がありません。添削指導を行う際、そのことを口実にして、あいまいな、どっちつかずのコメントを書いて、それでよしとする指導者が結構います。これでは、苦労して文章を書いた本人は納得がいきません。「自分の書いた作文はどこが良いのか悪いのか、教えてください」と言いたくなるでしょう。


誤解を恐れずに言いますと、絶対に間違いのない添削指導は存在しません。つまり、どれほど腕のいい添削者でも不注意な添削をしてしまう危険は常にあるのです。それが原因で、受講生から反発を招く場合もあるでしょう。だからといって、指導コメントを書くことを恐れてはいけません。腹を決めて書かなくてはいけないのです。反発を招こうとも、受講生を納得させることが重要です。そうでなければ添削をする意味がありません。どっちつかずのコメントを書かれては受講生も途方にくれるだけでしょう。添削指導は、受講生の実力向上のためのものですから、受講生に伝わらないようなコメントを書いていては意味がないのです。


 


添削は真剣勝負


「直すほうがよいと思う箇所はあっても、生徒が傷つくかと思うと、何も書けなくなる」

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「添削は、指導者と生徒の、切るか切られるかの真剣勝負です。もちろんなるべく傷つけないように伝え方を工夫する必要はあるでしょう。しかし、問題点に気がついたら、腹を決めて、切り込まなくてはいけません。そうしなければ生徒には伝わないでしょう」


指導者は、目の前の作文・小論文の「克服すべき課題」を見逃してはいけないのです。受講生がその欠点を克服するチャンスはまさにそのときで、添削者の目の前に示されているのです。ここから逃げては、受講生の力を伸ばすことはできません。


 


添削とは書き直しのためのヒントを与えること


「信念に基づいて指導する」という意を勘違いしないでいただきたいのは、添削は、指導者の考えを押し付ける行為ではないということです。


「添削指導のねらいは、書き直しのためのヒントを示すこと」


添削指導者はこの添削のねらいを忘れてはいけません。自分の価値観を押し付けたり、書きたい内容に書き改めることは添削指導ではないのです。受講生が書いた内容を認めたうえで、どう直すとよいかをズバリ指摘して、そこを改善するためのヒントを書くのが添削指導です。「欠点の指摘」と「改善策の提示」を信念に基づいて行うのが、受講生の力を伸ばせる添削指導と言えるでしょう。


 


hakuran-t01b.jpg優れた文章を書けても優れた添削はできない


価値観を押し付けるタイプの指導をするのは、教師としての指導力に自信をお持ちの方に多いようです。


ずいぶん前の話ですが、塾長と何人かの予備校の先生方が集まる会に同席したことがありますが、その時に、ある他教科の先生が、塾長に多少冗談混じりで尋ねました。


「樋口先生、私にも小論文の添削指導はできますかね」


その先生は当時人気講師で、とても弁の立つ方でした。この質問に対し、塾長はこのように答えたのを、今でも印象深く憶えています。


「無理だと思います。先生は強い個性をお持ちなので、鋭い視点に基づいた優秀な小論文は書けるかもしれません。しかし、添削する側に回った場合には、自分の価値観に反する考えを恐らく許容することができないでしょう。それでは添削はできません。僕は、一つの課題に対して、5つも6つも切り口を示すことができます。だから生徒の書いた内容を活かしながら、最善のアドバイスを送ることができるのです」


文章指導をするには、多くの知識を学び、多様な価値観を理解していなくてはなりません。塾長はもちろんのこと当塾講師陣は、よき添削コメントをアウトプットするために、絶えず様々な知識をインプットするように努力しています。


 


文字の向こうの相手を想像する


信念にも基づいた添削指導をするために、当塾講師陣がもう一つ心がけていることがあります。それは、今目の前の作文・小論文を書いた相手を想像することです。小学生なのか、中学生なのか、大学受験生なのか、ビジネスマンなのか。小学生であれば、1年生なのか3年生なのか6年生なのか。6年生であれば、学習経験はどの程度か、受講目的は作文に対する苦手意識克服なのか、中学入試対策なのか、などのように、年齢や学習経験、受講目的といった基礎情報を頭の中で確認します。さらに、ここが最もプロとしての眼力を求められるところですが、書かれた内容に込められた意図や受講生の持つ独特のクセを、目の前に広がる文章から見抜きます。このようにして集めた情報からどう料理するのか、添削の全体像を描いてから、「克服すべき最大の課題」に対し、バサリと切りかかるのです。


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