第2話:文章を学べば、こんなにいいことがある!
発信力を伸ばそう
白藍塾文章教育のねらいは、究極的には「受講生の発信力を伸ばすこと」にあります。発信力とは、書いて伝える力、話して伝える力など、外に向かって自分の意見や考えをアピールする力のことです。日本の教育は昔も今も、読み取る、聞き取る、感じ取る、覚えるなどの受信力を伸ばすことに重きを置いていると言えるでしょう。しかし、受信中心の教育では、これからの情報化、グローバル化の進んだ社会では生き残っていけません。自分の考えを外に向けて発信する力がなければ、どんなに価値ある知識や面白いアイデアを持っていようと、他者には伝わらないからです。他者に伝わらなければ、ビジネスの成功も社会の発展も成し遂げることができません。日本の将来のため、教育界は、子どもたちの発信力を伸ばすことにもっと重きを置いたほうがよいのではないでしょうか。
発信力を伸ばせば、受信力も伸びる
「そうは言っても、入試が受信力を見るものが大半だから、現状では受信中心の教育にならざるを得ないんですよ」
ある中学校の先生が、発信力を育てる重要性を十分理解しつつも、このようにおっしゃっているのを聞いたことがあります。
もちろん私たちは受信教育そのものを否定するつもりはありません。土壌となる知識や経験を受信しなければ、効果的な発信もできないでしょう。だから、読み取る、聞き取る、感じ取る、覚えることも大いにやってほしいと思います。白藍塾でも、中学生以上の小論文講座では、紙上講義や解説・解答を読んで、様々な知識や考え方を吸収できるように工夫をしています。小学生作文教室(低・中学年)では、毎回課題の物語を添えて、読み取る力をつけるトレーニング問題を加えています。
ただ、白藍塾の受信教育が多くの学校や塾のそれと違うのは、受信だけに留めず、そこで得た知識、読み取ったこと、感じ取ったことを使って、小論文や作文を書く、発信学習につなげていることです。その結果、図らずも、「小論文を勉強したら国語の成績があがった」「白藍塾で毎月作文を書いているうちに読解力がついた」といった受講生の声をずいぶんいただいてきました。確かに、学んだ知識を文章の中で使うにはその知識を理解していないと使えません。また、課題文をもとに作文や小論文を書く場合には、課題文の筆者の主張を捉えていないと的外れな文章になってしまいます。上っ面の理解で通りすぎようとしても、そうはさせてくれないのが、発信学習の伴った受信学習なのです。当塾に限らず多くの教育現場も、発信力を伸ばす教育を併せて取り入れたほうが、これまで以上に身になる受信教育を実現できるかもしれません。「身になる」の意にはもちろん、「入試で成果を挙げる」ことも含まれます。
書く力を磨けば高度な発信ができる
発信力には、大きく分けて、書いて伝える力と話して伝える力があります。どちらももちろん大切ですが、私たちは、書いて伝える力を伸ばすことをまずは優先して学ぶことをすすめます。
人は、文章で表現しようと思ったときに、最初から書く内容が決まっているわけではありません。頭の中に散らばっているもやもやした考えやアイデアを取捨選択し、固めては練り直し、また固めては練り直すことをくり返しながら、一つの文章に仕上げていきます。つまり、書く行為には、考えやアイデアをいかに深めるか、いかに面白くするかといった表現を工夫する練習、いかに説得できるか、いかに効果的に伝えられるかといった話の組み立てを考える練習が含まれているのです。こういった練習を積むことで、より高度な発信の力が育ちます。それは書いて伝える力だけでなく、話して伝える力のレベルも引き上げるでしょう。
この高度な発信力を育てるために、白藍塾の文章指導はあります。文章指導とは、単に「てにをは」や誤字脱字をチェックするだけのものではなく、受講生がより高度な考えや、より面白いアイデアを発信できるようになるためのサポートでなくてはならないのです。
手を挙げられない子にも目立つチャンスが訪れる
数年前から私立の小・中・高等学校の文章教育サポートを行なっている関係で、ときどき学校の授業見学に訪れることがあります。数年前にある小学校の作文授業を見学したときのことです。面白いアイデアをノートにメモをして、発表しなさい、と先生が指示しました。数名の児童が手を挙げて、発言します。尤もな意見を言って周囲をうなずかせている子や、面白いアイデアを言って友達を笑わせる子もいます。ただ、発言するのは、活発な何人かの子どもに限られています。
手を挙げない数人の子どものノートをのぞいてみました。すると、発表されたアイデアよりも、鋭い視点やユニークなアイデアを書いている子もいるではありませんか。
こういった子のアイデアも、先生がうまく発表してあげると、紹介された子はとても自信になり、きっと次の機会には、これまでよりも積極的に自らのアイデアをアピールするようになるでしょう。
引っ込み思案の子も、文章であれば目立つチャンスをつかめます。文章教育は、多くの人の発信力向上のチャンスを作るのです。
発信力が、さまざまなチャンスを呼び込む
文章を書いて発信する力が、現代でどれほど重要かは、大人の方は身にしみて感じていることと思います。エントリーシートでいかにアピールするかで、望みの雇用を得る確率は大きく変わります。企画書や事業計画書を書ける人と書けない人の社内での処遇の違いを多くの方が目の当たりにしているはずです。書いて伝える力、発信力を身につければ、さまざまなチャンスをつかむことができるのです。現代は、文章を書いて、ビジネスや夢の可能性を広げる時代と言っても、決して言い過ぎではないかもしれません。
今、世界で最も発信力のある人物は誰かと問われたら、多くの人が、オバマ大統領の名前を挙げるのではないでしょうか。彼はまさに自伝を書いて発信することで一躍全米中に知られるようになり、ついに大統領にまでなりました。
その自伝『マイ・ドリーム』(ダイヤモンド社)を読んだところ、インドネシアで暮らしていた少年時代にアメリカの通信教育を受けていたとの記述がありました。
「そうか! オバマ大統領の演説術は、通信教育を通じて、書いて伝える発信力を身につけたおかげなんだ」
と、勝手に解釈し、通信教育を運営する身としては、なんだかとてもうれしい気分になりました。
通信教育で発信力を養えば、大統領も夢じゃない!
もっとも、私の勉強不足のため、実際にオバマ少年がどんな通信教育を受けていたのか、どのくらいやっていたのか、はたまたその通信教育が今日の活躍にどれほど役に立っているのかはわかりません。どなたかご存じの方、教えてください!
(2009.3.1)
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