白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第19話:よい読書感想文を書くには?

 

夏休みの宿題と言えば・・・

夏休みの宿題の定番と言えば、読書感想文です。今、読書感想文の書き方がわからず、憂鬱な気分で夏休みを過ごしている小学生は大勢いるのではないでしょうか。tokoton-19a.jpg

今回は、白藍塾流の読書感想文の書き方とともに、どうすればよい読書感想文が書けるか、そのツボを紹介したいと思います。

 

メリハリのある読書感想文を書くために

白藍塾では、次の四部構成で読書感想文をまとめるように教えています。

 

 

(ホップ)

最初に本を手にとったときの印象や本を読むことになったきっかけを書きます。

(ステップ)

本の内容を簡単に説明します。物語などの場合は、あらすじを書きます。ただし、感想文はあらすじ紹介ではありませんので、簡単に説明する程度で十分です。

(ジャンプ)

その本のどんなところがおもしろかったか、それを読んで何を考えたかを、なるべく個性的に書きます。ここが読書感想文の中心です。

(着地)

全体をまとめます。これからどんなことを考えていきたいか、どんなことをしたいか、さらにどんな本を読みたいかということを加えてもいいでしょう。

 

 

もちろん、優れたお子さんであれば、独自の書き方でもすばらしい読書感想文が書けるでしょう。ただ、多くのお子さんは、だらだらと本の内容をなぞり、最後の最後で「ぼくもこれからは・・・のように、友達を大切にしたいと思います」などと、教訓めいた感想をひと言添えるだけのつまらない感想文を書いてしまいます。「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」「着地」の4つのブロックを意識して、どこに何を書けばよいのかを考えながら書くことで、メリハリのある読書感想文を書けるようになります。

 

メインテーマを捜せ

読書感想文で一番重要なのは、ジャンプに何を書くか、です。ジャンプで、深い内容、読んだ人が「鋭いなあ」と思える内容を書くためには、本のメインテーマを考えることがカギです。メインテーマとは、その本を通して作者が一番言いたかったことです。評論文の場合には、書き手の主張は一つで、捉えやすい場合が多いのですが、物語は優れた作品であればあるほど、多面的な読み方ができて、主張を捉えにくい場合が多いようです。それでも、文中のいくつかの手掛かりから、メインテーマを探り出し、それに対する自分の考えを述べることで、内容の深い読書感想文をまとめることができます。

読書感想文を書くにあたって本を読み返す際「果たしてメインテーマは何だろう」と考えながら読む行為は、例えて言うなら、探偵が犯人を割り出す推理の過程に似ているのかもしれません。

メインテーマを探るには、物語のターニングポイントはどこか、クライマックスでは何が起こったか、登場人物の関係性はどうなっているか、といった文中に残された証拠を一つ一つたどっていくことが重要です。その一つ一つを子どもたち自身が発見できるようにサポートするのが、白藍塾の実践している読書感想文指導です。

 

メインテーマの特定はなかなかできない

メインテーマ探しは、大人にも非常に骨の折れる作業です。tokoton-19b.jpg

当塾で、ある本を題材に読書感想文指導を行う際には、メインテーマについて講師間の共通認識を持つための会議を開くのですが、これが中々まとまりません。本が傑作であればあるほど、多面的な読み方ができますので、「メインテーマはこれ!」となかなか言えそうで言えないのです。大の大人がああでもない、こうでもないと口角泡を飛ばしつつ議論してようやく定まります。

指導する大人がこうなのですから、子どもたちが、メインテーマ探しするのはやはり大変です。

「メインテーマを考えるために何度も本を読み直した」

 会員からは、毎回こんな感想も戻ってきます。

 ただ、そうやって苦労しながら「メインテーマは何だろう」と考えながら物語を吟味する作業に、読書感想文を書く意義があるように思います。なぜ子どもたちの感想文が内容をなぞるだけのものになってしまうかと言えば、自分の考えをぶつける焦点が定まらないからでしょう。メインテーマという、考えをぶつける的(マト)が定まれば、内容をなぞるだけの感想文を脱却し、メインテーマに対し自分の考えをぶつける、質の高い感想文が書けるようになるでしょう。

 

別の読み方も許容する

 私たちの定めたメインテーマとは違う捉え方をする子どもも当然います。明らかに間違えた捉え方をしている場合を除き、講師はできるかぎりその子ども独自の読み方も許容することも大切です。そのうえで、もうひとつの読み方があることを示唆し、私たちの定めたメインテーマを考えさせるように仕向けられれば、多様な見方を育てられ、さらに意義ある学習になるでしょう。

 

メインテーマ会議を家族で

蛇足ながら、ご家庭でもメインテーマ会議を開くことをおすすめします。お子さんの読んだ本をみんなで回し読みをした後に、開いてみてはいかがでしょう。

会議で講師たちが丁々発止と渡り合うさまは実に見ものです。推理小説に出てくる探偵のような気分を味わえるからでしょうか。熱くなりながらも、どこか議論を楽しんでいるようなところがあります。かつて私も参加し、シタリ顔で自説を語ったこともありました。たまに皆から賛同を得られると、とてもいい気分になりました。

お子さんの夏休みの宿題に読書感想文があるならば、ぜひおすすめします。

 

(2010.8.1)

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