白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第34話・慶応受験のすすめ


小論文入試と言えば・・・


 小論文入試で有名なのが慶應義塾大学です。他大学が小論文を試験科目に導入したり取りやめたりとその扱いに右往左往する中で、慶応は何十年も変わらず一般入試で小論文試験を課しています。現在は理工学部、薬学部を除く文、法、経済、商、総合政策、環境情報、医、看護医療の8学部で実施しています。


 白藍塾は、創立当初から慶応対策に力を入れてきました。現在でもその姿勢はかわりません。「慶応・国立コース」と銘打った講座では慶応各学部の対策をきめ細かく行なっています。そこで今回は、慶応小論文を20年に渡り追い続けてきた白藍塾なりに、慶応の小論文入試とはどんなものなのかを説明してみたいと思います。


 


慶応小論文は総合力をみる問題


 小論文入試は何のために行われるのか。入試をよく知らない人に、この問いを発したとしたらどんな答えが返ってくるでしょうか。おそらく「個性」と答える人が多いと思います。確かに15、16年前までは、個性を見ることをねらいに小論文入試を実施する大学が多くありました。しかし現在は、一部の大学のAO入試と芸術系の大学で個性をみるための小論文入試を行なっていますが、多くは総合的な学力をみることに審査の観点を移しています。


 慶応大学はずっと以前から小論文を「総合力をみるための試験」と位置付けています。個性派のマスコミ人を多く輩出する文学部でもその姿勢はかわりません。2003年度まで小論文試験を実施していた早稲田大学文学部(当時は第一文学部・第二文学部)は個性重視のねらいをありありと感じる出題ばかりでしたが、慶応の文学部ではそのような出題はありません。常にレベルの高い読解力を試す問題が出されます。現代人の精神、現代における文化のあり方などを問う課題文が出題され、それを的確に読み、論理的に説明する力が求められるのです。


読解力を試しながら、論理力、思索力、それを支える知識力を総合的に問うことが小論文入試を行なう目的と言えます。このことは、問うべき知識領域に違いはあっても、慶応の他学部にも共通して言えることです。


 


慶応小論文に取り組めば入試に強くなる


 慶応の小論文では新しいテーマを取り上げることが多く、日本社会の現状、将来を考える手がかりになる知識を得られることが多いと言えます。慶応の過去問題をじっくり読み込み、理解を深めておくことで、様々な問題に対し、時代を反映した鋭い意見を展開できるようになるでしょう。


経済学部では、現代社会の典型的な問題を扱っています。日頃から新聞等に目を通し、社会への関心を持っていれば非常に読みやすい文章ばかりです。意外にも経済に関する文章はあまり出題されません。これは「経済学とは人間活動の全てに関係する」という慶応の経済学部からのメッセージと受け取れます。一つの偏った分野のみに関心を示すのでなく、社会問題全般に積極的に関心を持つ総合力のある学生を迎え入れたいという意思表示なのでしょう。


法学部は一昔前に比べて難しめの課題文を出題し、受験生を戸惑わせることもありますが、大枠でとらえると、毎年、人権や政治など現代社会に関わる問題を取り上げています。


骨のある慶応の課題文を読み込めば他大学の小論文入試の課題文は難なく読めるようになります。また、課題文で得た知識は他大学の小論文問題を読むときの助けにもなります。さらに言えば、慶応小論文の課題文で得た知識は現代文や英語の長文を読み取る際にも大きな力になるでしょう。


 


慶応小論文を学べば併願校の幅が広がる


 慶応SFC(総合政策学部、環境情報学部)の小論文は複数資料を課題とするのが伝統です。資料は全て文章のときもありますし、グラフや図表が含まれることもあります。見なれていないと膨大な量の資料に驚くかもしれませんが、コツさえつかめば資料の扱い方も難なくできるようになるでしょう。総じて言うと、まず課題のねらいをよく見極め、どのような方向でまとめるかを考えたうえで、答案作成の参考になりそうな資料を選んで読めば対応できます。


 総合政策学部では、国家、情報社会、グローバル化を中心に、現代社会の問題を総合的に捉え、分析し、的確に方向性を示すことが求められています。


環境情報学部は、情報社会、コミュニケーション、社会状況のあるべき姿などを問う課題が多く出題されます。また、ここ数年、企画や研究計画を書くことを求める提案型の設問が出題されています。


 複数資料が出題される問題は国立大学の小論文問題に結構あります。従って小論文試験を課す国立大学を志望する受験生は、慶応SFC対策をとっておけば慶応入学の権利を確保したうえで国立大学の試験に臨める可能性が広がります。


 


とりあえず慶応を目標に


 高校2年生の冬休みあたりから本腰入れて受験勉強を始める人は多いと思います。小論文の勉強も「ものは試しに」と高2の冬休みから始める人が結構います。ただ、高2の段階で受験勉強を始める高校生は、確たる目標を持たずに始める人が多いようです。せっかく本腰を入れて取り組むなら、目標をきちんと持つことをすすめます。勉強をするにも目標があると力の入れようも変わります。小論文の勉強をしようと思っているのならば、とりあえず慶応大学を目標にしてみてはいかがでしょうか。国公私立のあらゆる大学との併願が可能になります。東大を後期でアタックするチャンスも生まれます。


文系か理系か迷っている人もひとまず慶応をめざして小論文を勉強しておけば、どちらに転んでも有益な学習になります。理系に進んだ場合でも、医学部、看護医療学部以外にも、SFC二学部も視野に入れることができます。学問を横断的に学べるSFCでは、理系寄りの研究をする学生もたくさんいます。SFC二学部は、小論文と数学または英語の一科目が選択ですので、数学の得意な人には穴場の学部と言えるでしょう。


志望校を検討した結果、仮に慶応を受験しなくなったとしても、慶応小論文攻略を目標に培った総合力は他大学の現代文対策にも大いに役立ちます。それだけではなく、英語や社会など他科目の学力アップを図る素養にもなります。つまり、決して損はしないのです。


 


白藍塾の慶応対策


 白藍塾が慶応志望者に対してどんな指導をしているのかを最後に紹介しましょう。


まずはやさしい問題からスタートし、基礎をしっかり築きます。最初から過去問題をやりたがる受験生がいますが、基礎力なしに難解な入試問題をやっても百害あって一利なしです。私たちはそのことを長い指導経験から熟知しているので、ほぼ例外なく全ての受講生に、最初は基礎問題から取り組むように指導しています。


基礎が出来上がったところで志望校の傾向問題、対策問題へと段階的に進みます。添削指導のみならず、推薦図書の紹介、「知識を増やそう」などの紙上講義などを通じ、知識の植え付けも行ないます。


対策問題の段階では、学部別の問題を用意しています。紙上講義でも「出題傾向分析」「これからの対策と心がまえ」「参考図書」「テクニック」といった、とっておきのネタを伝授するようにしています。


 また、さらに余力のある受講生には「KT(慶応東大)特別補講」という特別講座を設けています。


 時々「白藍塾で取り組んだ課題とそっくりの問題が出た」という驚きと喜びの声を頂くことがありますが、それは当てずっぽうな予想を授けたのではなく、塾創立以来、総力を結集して慶応小論文を見つめてきた実績と、密度の濃い講座カリキュラムゆえに起こることなのです。


 


(2011.12.04)


カテゴリー

アーカイブ

カテゴリー