第6話:熱心な保護者に支えられて
保護者の声
小学生講座では、受講の中間点で、保護者の方々から家庭学習の様子を報告してもらいます。報告書を読むと、楽しんでいるお子さん、いやいややっているお子さん、たっぷり時間をかけているお子さん、あっさり仕上げてしまうお子さんなど、様々な家庭学習の様子が伝わってきます。提出は任意ですが、多くの方が熱心に報告してくれます。
この報告書の内容は、講師が受講前半の指導の手ごたえを推し量るとともに、受講後半の指導展開を考える貴重な資料になります。
報告書には、お子さんの学習状況のお知らせとともに、ご相談が寄せられることがあります。今回は、会員保護者から多く寄せられる質問に答えながら、白藍塾小学生作文教室の上手な活用法を紹介したいと思います。
「家庭で、どのくらいの時間を作文の勉強に充てればよいのか」
子どものタイプや他の習い事との兼ね合いによって異なるので、一概に言えませんが、
答案の提出状況のよいお子さんのご家庭に尋ねると、土曜日か日曜日の午前か午後を作文の学習時間に充てていることが多いようです。つまり週1回、2~3時間でしょうか。
前回答案の復習や課題物語の読み込みなどは短時間で切り上げてよいとは思いますが、チャレンジ問題(400~800字の1本の作文を書く問題)に取り組むときは、アイデアを練る時間をたっぷりとるほうがよいでしょう。頭の中に詰まっているアイデアを、ああでもない、こうでもないと練る過程で、思索力、表現力が培われます。したがって一本の作文を書くときには、制限時間を厳しく設けず、ゆったりした時間の中で原稿用紙に向かうのが最善の時間のとり方かもしれません。
なお、毎日こなすトレーニングとしては、作文ドリル『書く力をつける』(学研)をすすめます。一日5分やるだけでも効果てきめんです。こちらは、塾長樋口裕一と、当塾講師で”ドリル問題作りの名手”山口雅敏の共著です。低・中・高学年の3冊シリーズになっています。ここで紹介しているドリル問題を参考に、親御さんがオリジナルの問題を作ってあげるのもよいでしょう。
「親がどの程度、口出しをしていいのかわからない」
子どもの答案があまりに不十分だと思ったときには、ヒントを出してあげましょう。
主語・述語のあいまいな文章の場合には、子ども自身が主語を発見できるようにヒントを出します。たとえば、「この、わらった、は、だれがわらったのかな?」などのように言うとよいでしょう。
味気のない文章の場合には、目に見えるように書くように促します。たとえば「あさがおがさいてよろこんだ」という文章であれば、「何色のあさがお?」「どのくらいの大きさのあさがおかな?」「よろこんだ、と書いてあるけれど、どれくらいよろこんだのかが読んでいる人の目にうかぶように書いてみよう」などと、ヒントを出します。
うまく伝わらないときは例を出してもいいでしょう。「たとえば、とびあがってよろこんだ、とかね」というように。しかし、いくつも例を出してはいけません。その例を参考に、子どもが自分の答えを見つける余地を残しておかなくてはなりません。子どもが原稿用紙に書きとめるのは、やはり子ども自身が発見したアイデアや表現でなくてはなりません。そうでないと、子どもは作文を面白く思わないでしょう。
親がヒントを出すことを、当塾では積極的に奨励します。しかし出しすぎてはいけません。お子さんの学習の様子を見ながら、その塩梅を調整してください。
学習を始めたばかりの頃は、親子二人三脚で取り組むつもりでもよいかもしれません。学年があがっていくにつれて、ヒントを出す頻度を減らし、やがて一人で取り組めるように導くのが理想でしょう。
「わが子の作文は伸びたのか?」
前回答案と見比べてください。白藍塾の講師も、添削指導をするときに、必ず前回答案のコピーに目を通します。そうすることで、前回答案と比べて、どう良くなっているのか、注意した点が改善されているのかを見ることができます。前回と比べて進歩した点がある場合には、その点を講評欄に書きますので、講師の講評を読んでもらえば、子どもが何を克服したのかを知ることができると思います。
さらに、半年、一年、二年と、だいぶ以前に書いた作文と今の作文を比べてください。
表現力が豊かになった、文章にまとまりが出てきた、会話文の使い方が上手になった、など、その成長が手に取るようにわかるでしょう。
昔と今の答案を見比べたときには、添削の内容にも注目してほしいと思います。講師は、受講生の実力が上がってくるにつれて、指導レベルを引き上げています。講師の添削内容が「以前に比べて、ずいぶん高度なことを要求しているなあ」と感じたならば、それはお子さんの作文力がアップしている証拠と思ってよいでしょう。
「白藍塾で身につけた力は学校の作文にも活かせるの?」
もちろん活かせます。講座で身につけた「ホップ・ステップ・ジャンプ・着地」の作文構成法は、学校の宿題で多い行事作文などを書くときにも使えます。
「運動会」というお題の例文を挙げましょう。
4年生の男の子が書いた作文を下地に、当塾講師が手を加えて作りました。「運動があまり好きではないので運動会の競技全般は面白くなかったが、新しい友達と交流できたことがとても価値があった」というのがこの作文の概要です。「新しい友達との交流」をテーマにして、そこをジャンプで詳しく書いた構成になっています。講座で多く書いている想像作文のみならず、行事作文でも、ジャンプを詳しく書くことが最も重要です。
〔ホップ〕
10月10日、少し寒かったけれど、運動会がありました。
〔ステップ〕
ぼくは、運動が好きではないので、運動会はきらいです。50メートルのかけっこは5位で、点はつきませんでした。それから、玉入れに出ました。ぼくは白組でした。はじめは赤の勝ちでしたが、だんだん白がぎゃくてんして、けっきょく白が勝ちました。でも、玉を一つも入れられなかったので、白の587点のうち、ぼくは1点も入れていません。だから、運動会もあまりおもしろくありませんでした。
〔ジャンプ〕
けれども、今年はお弁当の時間がとても楽しかったです。去年までは、ぼくの家族だけでした。でも、今年は京太くんの家族といっしょに食べました。お母さんどうしがなかよしだからです。ぼくと京太くんは、あんまり話をしたことはなかったけれど、いっしょにお弁当を食べているうちに、なかよしになりました。京太くんはリレーの選手です。弁当のあとで、走り方を教えてもらいました。ぼくの走り方は、手のふり方が弱いと言ってくれました。
〔 着地 〕
来年は、京太くんに習ったように走って、少し点を入れたいと思っています。
小学生講座の上手な活用法
最後に、少し補足しながら、まとめましょう。
作文の勉強にはそんなに多くの時間を割く必要はありません。しかし定期的に時間の確保をしないとなかなかできないので、そこは親御さんが協力して時間作りをしてあげてください。中学入試をきっかけに休会する子、しない子がいますが、中学入試は年々、知識を問うタイプから、伝える力や意見を問うタイプにシフトしています。入試の底力をつけるためにも、週1回の作文学習を確保しておくほうが、これからは有効かもしれません。
親御さんがヒントを出すのは大いに結構です。ただし、ヒントを出しすぎないように注意しましょう。低学年のうちは親子二人三脚で取り組むつもりでもよいでしょう。親子コミュニケーションの一環として作文学習を活用するのもよいことだと思います。
子どもの学習効果をみるのに最適の資料は添削済みの作文です。毎回、必ず目を通してください。そして、時々、昔の作文と今の作文を比べてください。
作文のみならず学校の様々な学習に、白藍塾の作文を応用してみましょう。作文学習で培った発信力はいろいろな場面で有効に使えます。
また、学習効果を実感するために、様々な団体の作文コンクールに応募したり、新聞に投書を送ってみましょう。実はかなりの数の受講生が、そういった他流試合で手柄を挙げています。賞をとったり、新聞に自分の書いた文章が載れば、それは間違いなく大きな自信につながるでしょう。
(2009.6.28)
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