第17話・小論文の相乗効果
小論文受験は損?得?
「小論文さえなければ、行きたい大学の受験ができるのに…」「本音を言うと慶応に行きたいけれど、小論文を勉強する時間がもったいないからあきらめよう」。このように考えて、みすみす行きたい大学の受験をあきらめる人がいます。
確かに、英国数などの必須科目に加えて小論文を勉強するとなると、時間のやりくりがたいへんになると思いがちです。他科目の勉強時間が奪われてしまうのではないかと懸念する人もいます。ただ、小論文の他科目に及ぼす相乗効果がわかれば、時間を奪われるという感覚もだいぶ和らぐのではないでしょうか。今回は、受験勉強における小論文の相乗効果についてお話します。
現代文の成績があがる
大学入試用の講座では、毎年受講生全員に、合否結果とともに受講の感想を尋ねるアンケートをとっています。アンケートを読むと、毎年必ず何名かの受講生から「小論文を勉強したことで他科目の成績もあがった」との報告があります。
報告で一番多いのは現代文です。小論文で身に付けた論理的思考力は、評論文やエッセイを読み取るときに大きな力となるようです。白藍塾で指導する、課題文の「読み取りのコツ」はそのまま現代文の読解に活用できるためでしょう。「読み取りのコツ」とは次の4つのことです。
①課題文を四部構成に改めてみる
②キーワードを探して、その意味を捉える
③何に反対しているかを考える
④メインテーマを考える
白藍塾の受講生は、「読み取りのコツ」を常に意識しながら課題文付き小論文問題に挑んでいます。現代文でよく出題される、要約問題、筆者の主張をまとめる問題、接続詞を入れる問題、空所にキーワードを入れる問題などは、「読み取りのコツ」をそのまま問題にしたものと考えられます。「読み取りのコツ」を意識しながら小論文の勉強をしていれば、自然に現代文の問題を解く練習にもなります。そうなると、現代文にそれほど勉強時間を割く必要がなくなります。入試問題に頻繁に出てくるキーワードの理解に努めることと、問題形式に馴れるために模試を数回受ける程度で十分でしょう。
英語や社会の成績も伸びる
小論文を勉強したおかげで、英語や社会の力が伸びたとの声もよく聞きます。
英語の場合には、読解問題の成績によい影響が出るようです。小論文の型をマスターすることで、文章構造を的確につかめるようになるので、大意を掴みやすくなります。そうなれば自ずと読解問題の正答率も上がります。
世界史、日本史、政治・経済などの社会の成績があがったと報告する人もいます。小論文を書くにはネタが必要です。受験生にとって、一番手っ取り早いネタ本は社会科の教科書や参考書です。応用力のある受験生は、社会科で覚えた知識を小論文にアウトプットしようとします。アウトプットを前提に、いくつもの知識を関連付けて覚えることで知識はしっかりと身に付きます。これが成績アップにつながっているのでしょう。
気分転換になる
「小論文をときどき勉強することで、気分転換を図れた」といった声も毎年届きます。長丁場で学習を積み上げていく受験生にとっては、これも大きな利点でしょう。
受験生の場合、大半は暗記学習に偏ります。数学を入試に使わない多くの文系受験生の場合には顕著です。そういった中で、考えを文章にまとめて発信する小論文は脳の違う面を使っているようで新鮮な気持ちで取り組めるようです。気分がリフレッシュされれば、次に他科目の勉強に戻ったときも能率はグンとあがります。
実際の「声」
「小論文の相乗効果」を報告してくれた受講生の声もいくつか紹介しましょう。
◆受験期間の多忙な時に読書で吸収できないような「ネタ」を沢山教わることができてとても役に立ちました。小論文を受講したおかげで、論理的思考力がしっかり身に付き、それは小論文という科目以外にも大変生かすことができました。おかげで、苦手だった国語などの点も上がり、早稲田の政経に合格することができました。(慶大経済学部・S・M)
◆小論文が必要なのは一学部のみだったので、受講すべきか迷いましたが、小論文の勉強が現代文や長文英語の読解に役立ちました。特に現代文が苦手な方は小論文の勉強は重要だと思います。(早大スポーツ科学部・N・H)
◆現代文は解き方や重要ポイント等が全く分からず、白藍塾に入るまではとても苦労した。また、小論文は書いたことがなかった。私立大学は理系学部と文系学部の両方を受ける予定だったので、あまり現代文にも小論文にもかけられる時間がなかった。そんな中、知り合いにすすめられて白藍塾に入塾した。入塾して数ケ月経つと、国語の点数が伸び始めた。最終的には、自分でも驚くほど国語力がついたと思う。(ICU大教養学部・K・T)
相乗効果は受験勉強に止まらない
どうでしょう。「よし小論文受験に挑戦してみようか」という気持ちになれましたか。
もう少しだけお話します。
小論文を学んで得られる相乗効果は受験勉強に止まりません。小論文の勉強で身に付けた、イエス・ノー方式の思考法、四部構成による論理の手順、読み取りのコツなどは、大学に入ってからも、社会に出てからも、様々な局面を乗り切る処世術となります。受験で覚えた知識は、大抵入試終了と同時に頭の中から消えてしまいますが、書いて考えて身に付けた小論文のノウハウは、簡単に失われることなく、生涯の宝になるでしょう。
(2010.5・30)
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