白藍塾樋口裕一の小論文・作文通信指導

第28話:白藍塾を支える”ベテラン四人衆”


ベテラン四人衆


白藍塾は総勢十数名の少数精鋭の講師が指導にあたっています。そのうち、山口雅敏、大場秀浩、大原理志、服部守史の4人の講師は、草創期からのメンバーです。初めて小学生作文教室のパンフレットを作る際に4人のことを”ベテラン四人衆”と紹介したところ、案外評判が良かったために、今でも親しみを込めて紹介する場面ではそのように呼ばせてもらっています。


ベテラン四人衆と他の講師は、白藍塾講師になるきっかけが異なります。現在白藍塾の講師になるには厳しい審査・研修を受けなくてはなりませんので、最初から添削のプロになる覚悟が必要です。しかし草創期はそうではありませんでした。ほとんどは大学院生や塾長の知り合いから適性のありそうな人をスカウトしていました。ベテラン四人衆もそうでした。つまり4人は最初からプロだったわけでなく、仕事をしていく中でプロになり、白藍塾講師としての自覚を高めてくれたのです。いつ頃からそれぞれ意識の変化が起こったのでしょうか。今回はベテラン四人衆に「意識の変化のとき」を尋ねてみました。


 


講座の立ち上げに関わって


山口「白藍塾で添削を始めたときは大学院生でした。正直、最初はうまく対応できていなかったと思います。しばらくはバイト感覚が抜けきれず、指導に向かう姿勢も甘かったと記憶しています。ただ、中学生講座の立ち上げに一から関わらせてもらい、そのあたりでプロ意識が芽生えてきた気がします」


山口はアイデアマンで、他のメンバーが思い付かなかったアイデアをひょいと言ったりします。それによってこう着状態だった会議が大きく動き出すこともあります。10年ほど前から、そんな山口の特性に注目し、添削指導だけでなく、講座や教材の企画にも関わってもらうことが多くなりました。様々な企画に関わったことが添削指導者としての意識改革にもつながったようです。特性を活かせる場を得ることでプロ意識も備わったということでしょう。


ひと言断っておきますと、今回の取材で山口は初期の指導に対して少し謙遜しすぎのように思います。ソフトな言い回しで的確な指導のできる彼は最初から大きな戦力であったことを付け加えておきましょう。


 


千差万別の文章に触れて


大場「私も始めたときは大学院生でした。そのためでしょうか、当初は大学の卒論やレポートの書き方を意識して、小生意気ながら受験生の小論文をアカデミックなものに修正しようという意識が強くありました。しかし数年経って、推薦入試や社会人入試で受験する会員を多く受け持つようになり、それでは受講生に役立つ添削にならないことに気が付きます。千差万別の答案に出合い、個々の実力、個性、志望校に合わせて、いかに合格レベルに引き上げるかを考えるようになりました。一気に受け持ちが増えたときは辛かったですが、添削者としてのスキルはそのときに鍛えられました」


大場は端々に目が行き届く、頼りになる存在です。会議をしていても、他のメンバーが全く気付かなかったポイントをついてきます。きめ細かい目配りは大場の持ち味と言ってよいでしょう。小学校低学年から社会人まで幅広い年齢層の指導をこなし、また大学入試指導では、理系分野の指導もできる守備範囲の広い講師です。広い領域で指導を受け持つことで、きめ細かな目配りは一層研ぎ澄まされてきたのかもしれません。


 


指導の手応えを感じられて


大原「私も白藍塾で仕事を始めたときは大学院生でしたが、大学時代から予備校で添削のアルバイトをしていたので、小論文の添削には馴れていました。しばらくは予備校と白藍塾の両方で仕事をしていましたが、両者の添削には大きなギャップがあり、戸惑いました。予備校の添削はまさにアカデミズムを基準にした指導です。果たしてこれで本当に受講生のためになっているのだろうか、との思いは常にありました。また、担任制を取り入れているわけではないので、自分の添削によって受講生がどう変わったのかが全く見えてきません。そのことにもどかしさを感じていました。ところが白藍塾では指導の手応えを感じることができました。このやり方ならば力を伸ばせるという方法論があり、その成果が目に見えるようにわかりました。今ふりかえると、その思いが、白藍塾にしぼって文章添削指導の仕事をしてみようと思ったきっかけかもしれません」


教務主任である大原の添削は全講師の模範になっています。また、抜群の安定感があるため、安心して指導を任せることができます。質の高さと安定感は、豊富な指導経験を通じて、よい添削指導とはどういうものかを追求してきた結果得られたものだと、今回話を聴いて、改めて知ることができました。


 


社会人受験生の指導を受け持って


服部「私は大学の職員をしていた縁で、樋口先生と知り合い、添削を始めることになりました。最初は樋口先生の添削を見よう見まねでやっていただけでした。転機となったのは、社会人入試の指導を任されたことです。それまで指導していた高校生や浪人生は一応基本の型を意識して書いているものばかりでしたが、社会人の受講生は、型に従わず我流で書いてくる人が大勢いたので、その指導には手こずりました。また、みんながみんな同じ大学を受けるわけでなくバラバラですので、その対応もたいへんでした。ほぼ全員が過去問題を書いて提出してきますが、塾で作った解説・解答もない過去問題に一つ一つ対応するのにも本当に苦労しました。たいへんなのは今でも変わらないのですが、この社会人受験生対応でだいぶ鍛え上げられましたね」


服部は長年社会人入試指導で中心的役割を担っています。取材の中でも触れているように、社会人受験生には様々な立場の人がいます。それぞれに柔軟に対応するのはとてもたいへんなことですが、服部はいつでも喜んで仕事を引き受けてくれます。その甲斐あって合格アンケートに名指しで感謝される数も一番多くあります。一つ一つの答案に真摯に向かう、その姿勢が赤ペンからも伝わるために、多くの方々に感謝されるのでしょう。


 


目の前の仕事をやることで見えてくるもの


早いもので白藍塾も立ち上げから今年で20年が過ぎようとしています。20年の間にはいくつもの節目がありましたが、新たな挑戦のときにはいつもベテラン四人衆が率先して取り組み、指導の礎を築いてくれました。未知の壁に挑むことで一人ひとりが独自に腕を磨いてくれました。


「中学生を指導するときには、大人の基準で本当によいと思う点を褒めることが大切」


 山口の言葉です。中学生指導を受け持ち、どう接すると中学生の学習意欲を維持できるだろうかと必死に考えた末に導き出した指導ノウハウです。中学生は様々なことへの関心も高まる年頃です。親の言うことも聞きません。また中学生講座は入試や定期試験とも直接には関係ありません。そのような状況下で中学生の学習意欲を維持するには、彼らの大人の部分を尊重することだと考えたわけです。


「優れた答案に対しては、なぜその答案がよいのかを本人に説明するのも有効な指導」


 こちらは大原の言葉です。優れた答案をただ褒めるだけでなく、その答案を書いた受講生をさらに伸ばすにはどんなアドバイスが必要かを考えた末の指導テクニックです。優れた答案を書いたからといって、本人がそれを説明できるとはかぎりません。添削者がその良さを具体的に解説することで、受講生は自分の良さを客観的に捉えられるようになります。そうなれば、その良さを別の機会に応用できるようになると考えたのです。


 どんなコメントが本人のために一番役に立つのか、目の前にある答案を見つめながら、講師は常に考えています。その積み重ねが、独自の指導ノウハウの蓄積となり、プロ意識を一層高める力になっているのです。


 


(2011.5.31)


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