
7つの指導理念
信念に基づいて指導する
誤解を恐れずに言いますと、添削指導に唯一の正解はありません。
それが原因で、受講生から反発を招く場合もあるでしょう。だからといって、指導者は明確な指導コメントを書くことを恐れてはいけません。腹を決めて書かなくてはいけないのです。反発を招こうとも、受講生を納得させることが重要です。そうでなければ添削をする意味がありません。どっちつかずのコメントを書かれては受講生も途方にくれるだけでしょう。添削指導は、受講生の実力向上のためのものですから、受講生に伝わらないようなコメントを書いていては意味がないのです。
もちろん受講生を思いやり、伝え方を工夫する必要はあるでしょう。しかし、問題点に気がついたら、腹を決めて、切り込まなくてはいけません。指導者は、目の前の作文・小論文の「克服すべき課題」を見逃してはいけないのです。受講生がその欠点を克服するチャンスはまさにそのときで、添削者の目の前に示されているのです。ここから逃げては、受講生の力を伸ばすことはできません。
添削は「書き直しのためのアドバイス」と心得る
添削指導のねらいは「書き直しのためのヒントを示すこと」です。
自分の価値観を押し付けたり、書きたい内容に書き改めたりすることは添削指導とは言えません。受講生が書いた小論文や作文の内容を認めたうえで、どう直すとよいかをズバリ指摘して、そこを改善するためのヒントを書きます。「欠点の指摘」と「改善法の提示」を信念に基づいて実践してこそ、力を伸ばせる添削指導になります。
相手のレベルや能力に合わせて指導する
ほとんどの受講生は、1回の添削で全ての問題点を克服するのは難しく、何度か添削を受けるうちに、徐々に改善が見られ、力をつけていくものです。
白藍塾の講師は、毎回、受講生の答案を眺めながら「その答案の最も大きな問題点」を頭に思い浮かべます。その問題点に対し、どのような指導をして改善に向かわせるかを考えます。
大きな問題点の指導を優先的に考えて、他に問題点があっても、その日の添削ではあえて触れないこともあります。たとえば、大きな問題点とは別に、文章のぎこちなさという問題点があったとしましょう。その場合に、ぎこちなさにはあえて触れないでおくのです。そこに触れると、受講生の気もちがそちらにばかり向いてしまい、大きな問題点を改善できないままになってしまう恐れもあるからです。
1つ1つの答案に対し、伝えるべきメインテーマがあります。それをわかりやすく、効果的に伝えることが、添削に必要な配慮だと私たちは考えています。
相手に伝わらなくては意味がないと心得る
白藍塾の添削指導員に応募する人には、大学や企業の研究者だった方もいます。こういった人たちは、やたらに難しいことを言いたがる傾向があります。研究論文のような内容を、高校生の答案にびっしり書いて完璧な添削だと思っているようです。受講生は、ただ途方にくれるだけでしょう。
添削者は常に受講生の目線に立って指導ができなくてはいけません。高校生の書いた答案であれば、高校生に通じるレベルで書く必要があります。しかも単に高校生と一括りの見方をするのではなく、学年、学習段階、志望校、答案から読み取れるパーソナリティ、入試までの残された期間を考えて、指導する内容、伝える言葉を選べなくてはならないのです。
価値観を押し付けない
文章の添削指導をしていると、自分の信じている価値観、思想、信条と異なる意見に出くわすことがあります。添削者はそれを頭ごなしに否定してはいけません。どんなに自分の考えに自信があろうともそれを押し付けてはいけません。添削者は受講生と議論をしてはいけないのです。
添削者は「考えが間違っているかどうか」を判断する役割を担っているわけではありません。受講生の考えにどれだけ説得力があるかを見極め、それをどう改善すれば説得力が出てくるのかと考えて指導するのが仕事です。
自分なりに書いた文章中のアイデアを一切認めてもらえずに、指導者の考え、教科書の考えを単に押し付けられても、受講生は受け入れられません。まるでダメと思っていた小論文や作文にも、活かせるアイデアが眠っていることがあります。時間が足りないのか、指導力不足なのか、学校をはじめとする多くの文章指導の場において、生徒が書いた文章に対する読み込みが足らずに、せっかくの活かせるアイデアを見逃がしてしまっていることが結構多いように思います。
当塾講師陣は「受講生の言いたかったのは、きっとこういうことだろう」と、常に予測を立てながら赤ペンを入れることを心がけています。
相手の目的を意識する
添削指導のねらいは「書き直しのためのヒントを示すこと」です。
言うまでもなく入試対策用の講座は、志望校合格の力をつけることが目的です。受講開始から試験日までの限られた時間で一定の力をつけなくてはなりません。仮に合格できる力を5としたら、受講開始時点で3の人も1の人も、試験日までに5に引き上げなくてはなりません。残された日数が10ヶ月であろうと3ヶ月であろうと到達目標は同じです。
理解不足の点をズバリ指摘せずにあいまいにしていると、いつまでたっても基礎が身につきません。大学受験の小論文や出願書類は、論文基礎力を身に付けないと入試レベルの問題に取り組んでも歯が立ちません。時間がたっぷりあれば、のんびり受講生の「気づき」を待つやり方でも許されるかもしれませんが、限られた時間で大学に合格できる力をつけさせるには、なるべく早い段階で基礎をマスターさせなくてはなりません。そのためには欠点が明確に伝わる指導コメントもして、「今のままではダメなんだ」と理解してもらう必要があります。
過去と現在の連続性を意識する
白藍塾の添削指導は担任制で行います。担任制にすることで、一人の受講生を継続してみることができます。そうすることで「前回指導した点を克服できているか」「この欠点はたまたま今回だけのものなのか、それとも受講生の持つ悪いクセなのか」と、目の前の答案だけでなく、前回答案の内容を頭に置きながら添削できます。前回の問題点を克服できていなければ、別のアプローチで再度指導します。表れている欠点がそのときだけのものであれば、「受講生の苦手なテーマだった」「精神的に不安定な時期にある」などの原因が考えられますので、それぞれのケースに応じた指導をします。