文章教育コラム

過去問の課題文から知識ネタを得る

 たくさん書くことでもちろん小論文の力はついていくが、書かなくても小論文の勉強はできる。小論文の課題文や解説・解答を分析することは、その方法の一つだ。
 大学入試小論文の出題形式で最も多いのは、課題文を読んで設問に答えるパターンだ。入手できる志望校の過去問題については、できるかぎり実際に小論文を書くことを勧めたい。とはいえ、受験する大学・学部が複数ある場合は、その全ての過去問題を解くのは大変かもしれない。そうではあっても、過去問題に目を通すことはしてほしい。そして過去問題が課題文の付くパターンであった場合には、小論文を書かなくても、課題文は読んでほしい。読むだけでも大いに価値はある。課題文に書いてあった知識が小論文を書くためのネタになるからだ。

すべての本は良書である

志望学科と関連する分野の知識を得られる

小論文過去問題の課題文は、志望学科と関係のある分野のものが多い。しかもたいていは出題者が「いいことを言っているな」と思った文章なので、大学の好みに合った内容と言える。何年分かを分析すれば、その傾向が自然とつかめるようになるだろう。ネタとして覚えておいて損はない。

課題文から知識ネタを得る方法

まず課題文全体を「四部構成」に改めながら分析してみる。課題文の中で「問題提起」「意見提示」「展開」「結論」にあたる部分はどこなのかを把握できれば、筆者の主張をつかめる。その主張を抜き出して、自分の知識ネタに加えるとよい。また、課題文を読みながら、「へえー、そんな考えがあったのか」「なるほどそうだったのか」と感心するところがあったら、その部分をチェックし、自分の知識ネタに加えるのもいいだろう。

特に関心を持った文章があったら、課題文の終わりに出典が記載されているはずなので、出所となった本を買うか図書館で借りて読んでみるとよい。まるまる1冊読めば、多くの知識を得らえるし、知識の深い理解にもつながる。

大学入試の過去問題は、一般・総合・学校推薦の選抜区分に限らず、大学の公式ホームページで開示されている。ところが、課題文の筆者から掲載許諾を得られなかった場合には、設問や出典は紹介されていても、肝心の課題文が非公開となっている。しかし、出典である本を入手して、設問を頼りに本を読んでいき、「課題文はどこを抜き出したのか」と推理しながら読むと、難しめの評論でも案外楽しく読めるものだ。そして、そうやって推理を楽しみながら読んだ本から得た知識は、いつまでも忘れずに頭に残るものだ。小論文を書く時の得意ネタになる可能性も高い。

過去問題の解説・解答には要注意

過去問題は、大学の公式ホームページで入手できるが、小論文の場合には解説・解答例を公表していない場合がほとんどだ。もしも公式情報として、解説・解答例があれば、それは大いに参考にして知識ネタにするとよいだろう。

ここで注意したいのは、大学ではなく、市販の参考書や予備校や塾による過去問題の解説や模範解答だ。受験生には理解できないような難解な内容になっている場合が多い。大学院生などがアルバイトで書いたもので、自分の能力を見せようとして専門的なことを書いているものも見受けられる。それを無理に理解しようとすると混乱してしまう恐れもある。ましてや、そういった模範とは言えない模範解答をまねて小論文を書こうなどとはゆめゆめ思わないように注意したい。

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